生成AIによる白黒写真のカラー化の現状と課題

(2026年4月時点の現況に基づく)

従来型(特化型)AIによる白黒写真のカラー化

 筆者は2016年頃より、古い写真のデジタル修復を業務として本格的に請け負うようになり、依頼に応じて白黒写真のカラー化にも取り組むようになりました。ちょうどその頃、AIによるカラー化技術が注目され始めており、その革新的な技術に大きな感銘を受けました。一方で、不自然さや不完全さも多く見受けられ、AIに依存するだけではなく、人間(技術者)の関与の必要性を強く感じたことも事実です。

開発当初のAIによる自動カラー化

原板写真
原板写真
AI(2018年仕様)によるカラー化
AI(2018年仕様)によるカラー化

 その後、試験的にAIをカラー化工程に取り入れ、技術のさらなる可能性を模索してきました。2018年には、渡邉英徳・東京大学大学院情報学環教授による「記憶の解凍」ワークショップにも参加させていただき、カラー化の意義やAI活用の具体的手法について理解を深めました。

 

 この白黒写真のカラー化に特化したAI(以下、生成AIと区別するため「特化型AI」と呼ぶ)は年々進化を遂げ、当初多く見受けられた色ムラ、色抜け、煤けたような発色といった問題も年々改善されていきました。こうした進化を背景に、AIと人間の協業によるカラー化作業を本格的に進めるようになりました。

特化型AIの進化

2018年仕様
2018年仕様
2026年仕様
2026年仕様

 特化型AIは、物体や風景といったシーンを認識し、蓄積された膨大なデータをもとに「それが何か」を推定して着色を行います。そのため、空や海、山といった自然物や人肌など、一般的な特徴を持つ対象には比較的良好な色付けが可能です。一方で、固有性の高い人工物(衣服、商品、鉄道、車両、建築物、看板など)については十分なデータがない場合が多く、適切な色の「傾向」を捉えきれず、それらしい色、または曖昧な色付けにとどまる傾向にあります。

 

 そのため人間の関与は不可欠です。具体的には、「対象物の特定」「資料照合」「より精密な再現」や、「感性による空気感の再現」といった役割を担い、自然さと正確さを高次元で両立させるカラー化を目指して、AIとの効率的な協業を行ってきました。

 

  現時点において特化型AIは、「自然さ」という観点ではすでに高い水準に達しており、条件による差はあるものの、「雰囲気としてカラー化を楽しむ」といった用途であれば単体でも高い確率で対応が可能であると言えるでしょう。また、さらなる「自然さ」に加えて、何より「正確さ」が強く求められる本格的なカラー化においても、下地生成として有効に活用できるケースが多く、効率的な制作プロセスの実現に寄与しています。

AI(単体)カラー化とAI+人間によるカラー化

AI(特化型2026年仕様)によるカラー化
AI(特化型2026年仕様)によるカラー化
AI+人間によるカラー化(2018年筆者制作)
AI+人間によるカラー化(2018年筆者制作)

※AIによるカラー化:複数のAIに原板を入力、その中で最良と思われるデータを1点抽出(筆者の見解に基づく

※AI+人間によるカラー化複数のAIによるカラー化+高画質化データを部分的かつ効果的に活用し、人間による修復・修整・彩色データを融合

◾️特化型(従来型)AIによるカラー化と、AI+人間によるカラー化を、様々な条件で比較しております。
  当社「精密カラー化」技術とは?

生成AIによる白黒写真のカラー化

 AIによる白黒写真のカラー化技術が登場してから約10年が経過しましたが、ここにきて新たな進化が見られます。それが、生成AIを活用したカラー化です。現在では、ChatGPTやGrok、Geminiといった生成AIが広く普及し、専門知識がなくても高度な画像処理の恩恵を受けられる環境が整いつつあります。

生成AIによるカラー化実例

 生成AIは、適切な指示(プロンプト)を与えることで、対象物を解析し、関連する情報をもとに自然なカラー化を行います。本稿では、その性能を検証するため、実際の白黒写真を用いて比較を行いました。

原板写真(©️北國新聞社)
原板写真(©️北國新聞社)

 今回の検証では、3種類の生成AI(A・B・C)を使用し、同一のプロンプトを与えてカラー化を実施しました。また、結果の再現性を確認するため、Cについては同条件で2回(C-1・C-2)実行しています。

共通のプロンプトは以下の通りです。

 

この白黒写真は1962年2月25日、金沢市香林坊交差点の信号機が故障し、警察官が市電の線路切り替えを行う半地下の構造物、通称「出べそ」の上に立ち交通整理に当たった時の写真です。
• 史実に基づいてカラー化すること
• 輪郭・構成・陰影・細部は原画像から変更しないこと

• 既存のカラー化画像は参考にしないこと

 

その結果、生成されたのが下記の画像です。

A(2026年)
A(2026年)
B(2026年)
B(2026年)

C-1(2026年)
C-1(2026年)
C-2(2026年)
C-2(2026年)

 まず第一印象として、それぞれのAIに特徴はあるものの、全体的には味わい深い「昭和レトロ風」とも言えるノスタルジックな雰囲気を上手に演出しているように感じました。着色も良好で、従来の特化型AIと比較しても遜色ない、あるいはそれ以上の精度を有しているように見受けられます。


 しかし何よりも驚いたのは、画像認識能力と情報探索能力の高さです。車両、建築物、看板といった従来AIが苦手としてきた人工物についても、文脈を踏まえて対象を特定し、関連情報を参照しながら色付けを試みる挙動が確認されました。これは、従来人間が担っていた「対象物の特定」と「資料照合」という工程の一部を、AIが代替しつつあることを示しています。

 

 ただ一部では、特化型AIではなかった、原板の明らかな改変(Aの写真右、ビルの明治コナミルク看板など)も見られました。このような現象はハルシネーション(誤認や論理の矛盾を含む事象や事実とは異なる情報を作り出す現象)と呼ばれ、カラー化以前の深刻な問題となりますが、より適切な指示により回避できるのか、今後の進化により減少していくのか、それとも「生成」AIの避け難い特徴でもあるのか、いずれにせよこの問題は別の機会に詳しく検証する必要があります。

ハルシネーション例(左:原板 右:生成AI-A)
ハルシネーション例(左:原板 右:生成AI-A)

 ここでは生成AIの特徴をカラー化に焦点を当てて写真中央に写る「市電」に注目して具体的に検証してみたいと思います。各AIに着色の根拠を確認したところ、いずれも当時の金沢市内電車であることを正確に認識して詳細に情報を収集しており、1962年当時は「赤電車」(クリーム/赤のツートン)と「青電車」(深緑単色)と呼ばれた車両の存在に言及しました。

 

 実際には、この写真は筆者が2021年にカラー化を行った実績があり、その際の一次資料の調査により、該当車両は「赤電車」(上部クリーム/下部ルージュ系)であることが判明しています。

生成AIによる市電の着色結果(左よりA・B・C1・C2)
生成AIによる市電の着色結果(左よりA・B・C1・C2)

A.   上部をクリーム、下部をえんじに近い赤のツートンに着色 ← 「赤電車」と認識、実物にかなり近い
B.   青単色に着色 ← 「青電車」と誤認(さらに青電車という呼称に影響されたか、明度を無視し青単色に着色)
C1. 上部をクリーム、下部を緑のツートンに着色 ← 「青電車」と誤認(さらに存在しないクリームと緑のツートンに着色)
C2. 上部をクリーム、下部をえんじに近い茶のツートンに着色 ← 「赤電車」と認識、実物に近い

 

 この結果から、現状、生成AIは対象の特定や情報収集までは高精度に行うものの、その解釈や出力にはばらつきがあり、同一条件でも結果が変動する不安定性を持つことがわかりました。


 また、本件では既存のカラー化画像は参考にしないと指示したにもかかわらず、AIが提示する根拠の中に過去のカラー化事例(当社サイト等)が含まれていた点も確認されています。これが出力にどの程度影響しているかは不明であり、検証課題として残ります。

生成AIによるカラー化の特徴

 本検証の結果を踏まえ、本文では触れていない着目点も含め、生成AIによるカラー化の特徴を整理します(2026年4月時点)。


長所


• 対象物の高精度な認識と、それに基づく情報収集能力


• 文脈を踏まえた色再現


• 人間の感性を模倣した表現(ノスタルジーなど)の再現性


• 調査・資料収集の補助ツールとして有効


短所


• 正確な情報を取得しても誤った着色を行う場合がある


• 同一条件でも結果が再現されない不安定性


• 根拠情報が不透明、または架空である場合がある


• 原板の白黒画像の明度情報を無視する傾向


• 画像の改変(ハルシネーション)の発生


• 既存カラー化画像を根拠にしてしまう可能性

AIカラー化における今後の人間の役割

 生成AIの進化により、白黒写真のカラー化は「誰でもできる処理」へと近づきつつあります。特に「雰囲気としてカラー化を楽しみたい」といった用途においては、すでに十分対応できるレベルにあると言えるでしょう。


  一方で、史実に基づく正確性が要求される領域においては、人間による検証は不可欠です。生成AIは文脈を踏まえた「もっともらしい結果」を高い精度で生成しますが、それはあくまで確率的に導かれた仮説に過ぎず、その真偽を保証するものではありません。むしろ、自然であるがゆえに誤りが見過ごされやすいという特性を内包しており、検証を前提としない利用には本質的なリスクが伴います。

 また、感性の再現という観点においては、生成AIは過去データに基づく統計的な傾向の再構成を得意とし、「平均的に整った表現」を生み出す点で優れています。しかし、時代背景や個別文脈に根ざした解釈、表現上の判断といった領域においては、依然として人間の関与が重要な役割を担います。

筆者が収集した参考資料(一部)
筆者が収集した参考資料(一部)
AI+人間によるカラー化(2021年筆者制作)
AI+人間によるカラー化(2021年筆者制作)

 こうした特性を踏まえると、白黒写真のカラー化は今後、「手軽に雰囲気を楽しむためのカラー化」と「高い正確性と解釈力を要する高度なカラー化」という方向へと分化が進むと考えられます。後者においては、生成AIを効率的な仮説生成および補助ツールとして活用しつつ、人間が史実の検証と最終的な表現判断を担う・・・そうした役割分担に基づく協業の重要性が、今後さらに高まっていくでしょう。

アジャストフォトサービス株式会社
代表 三木 秀記 

※2026年4月時点の現況に基づいて執筆しています