あるユーザーテストによる評価では、AIによる白黒写真の自動色付けにおいて、約90%の結果について「自然だ」との回答を得たそうです。確かに、本項に示したAIの出力結果を見ても、一見すると自然な色付けをしてくれることがわかります。
しかし、開発者も「90%を99%にするのは難しい」と言います。
AIは局所的な部分や物体、また風景などのシーンを捉え、蓄積された膨大なデータを元に「それが何か」を認識して色を推定します。そのため、教師データを持ち合わせていない個々の特定の人工物に関しては、色の「傾向」を読み取るのが実質不可能なのです。実際、特定の人工物のような判断が難しい物について、AIは曖昧で煤(すす)けた色を付けてしまう傾向にあります。
上の写真は100年以上前に撮影された、陸軍大将・乃木希典の写真です。左から原板、AIによる自動色付け(2024年現在、最も自然であると感じた単体データ)、当社による色再現(精密カラー化)となります。中央のAIによる色付けは一見するととても自然で、多くの方が満足できる仕上がりとなっているように感じます。しかし、細部を拡大して見てみると、
かなり曖昧な色付けをしていることがわかります。曖昧さに関しては今後AIの精度向上により改善が期待できる部分もありますが、「軍服」や「勲章」などといった特定の人工物は、それに関する特定の教師データを持ち合わせていない限り、AIが推定することは不可能なのです。
しかしヒト(技術者)であれば、例えば「勲章」であることを認識し、「乃木希典」「受勲」で調べ、「金鵄勲章」「勲一等旭日桐花大綬章」「ナイト・グランド・クロス章」・・・と特定、資料と擦り合わせ、より正確で精密な色付けをすることができます。AIは「ヒトの判断をいかに予測モデルに落とし込むか」に焦点を当てて開発されたといいますが、「認識」して(調べ上げ)色を「特定」「推定」する能力は、まだまだヒトに一日の長があるように思えます。また、たとえ「勲章」の資料が見つからなかったとしても、ヒト(技術者)は決して曖昧な色付けはせず、色の3要素(色相・彩度・明度)を基軸とし、当時のフィルムの特性も踏まえた上で、より自然で正確な仕上がりを目指して入念に作業を進めることができます。
現状、90%の精度を99%に近づけるには、ヒト(技術者)の関与が必要不可欠なのです。
拡大して細部までご覧ください
原板の画質及び状態が非常によく、特に細かな彩色を必要としない肖像写真の例です。AIが得意とする条件が揃っており、ご覧のようにとても自然な色付けをしました(中・AI)。さらに複数のAIの肌データを融合し、背景、服の色ムラを修整することで、より深みのあるリアルなカラー化を実現しました(右・当社)。
上の写真に比べると原板の画質及び状態は若干劣りますが、無背景でシンプルな絵柄のため、AIも概ね自然な色付けをしました(中・AI)。色ムラを修整後、技術者による精密な修復・カラー化データと融合し、より自然で深みのある仕上がりを追求しました(右・当社)。
原板の画質が悪く褪色も進行しており、AIは認識こそしているものの、この状態では綺麗な発色は望めません(中・AI)。その場合非常に有効なのは原板の修復・修整作業で、この前処理を施すことにより、格段に画質と色の再現性が向上します(右・当社)。
自然の風景と人肌はAIの得意とするシチュエーションです。原板の画質が非常に良いこともあり、色抜けや煤けた色合いは見受けられるものの、下地としては十分に活用できるレベルです(中・AI)。肌の色抜け部分や煤けた緑を真夏の色合いに修整後、技術者による精密な修復・カラー化データと融合し、より自然で深みのある仕上がりを実現しました(右・当社)。
室内のような人工物に囲まれた写真はAIの苦手とするシチュエーションですが、現在(2024年)では精度の向上により下地に使用できるレベル程度までは期待できるようになりました(中・AI)。個々の人工物に関しては聞き取りや調査を行い、技術者により可能な限り正確性を追求して仕上げていきます(右・当社)。
こちらは写真の一部、着物の柄部分をトリミングしたものです。着物の柄のように細かく複雑なものは現状AIには対応困難で、大まかでぼんやりとした彩色しか望めません(中・AI)。遠目で見ると綺麗に色がついているようにも見えますが、精密カラー化では下地にも使用できないレベルであり、当社では全て手作業で対応しております(右・当社)。
上の3点は、街並みや群衆の複雑で密度の濃い情景写真のクローズアップです。原板が高精細のため、かなり細かな部分まで描写されておりますが、ここまで細かいとさすがにAIも対応できず、色抜け・色ムラが目立ちます(中・AI)。細かな情景写真は、人工物の下調べも含め手作業のウエイトがかなり高くなりますが、当社では原板の画質に耐えうる彩色作業を行っております(右・当社)。
写真左[原板写真]
無修正の状態(デジタル修復・修整前)
写真中[AIによる自動色付け]
複数のAIサイトに原板を入力、その中で最良と思われる出力結果を抽出(2024年現在)
写真右[当社による色再現]
原板にグラフィックソフトによる修復・修整・彩色加工を施し、複数のAIによる高精細化加工+色付けデータを効果的に加えた「精密カラー化」
ここでは、当社による白黒写真の色再現「精密カラー化」技術についてご説明します。実は当社が白黒写真のカラー化サービスを開始したのは2016年で、その年はまさにAIによる白黒写真の自動色付け技術が注目され始めた年でもありました。AIの自動色付け技術が世に出た時期に、何故あえて「ヒト」による「手間」と「お金」のかかるカラー化サービスを始めたのか? 理由はAI技術に感銘を受けたと同時に、ヒト(技術者)の関与の必要性を強く感じたからです。またそれにより白黒写真のカラー化技術の、飛躍的な進化の可能性を感じたのです。
2024年現在、AIの精度も当初に比べ大幅に向上しましたが、前述した例でもお分かりのとおり、ヒト(技術者)の関与の必要性については変わることはありません。
当社「精密カラー化」技術の特徴
・技術者による入念な「写真修復・修整作業」の前処理を施すことにより、色再現性を向上
・色の3要素、フィルム特性、調査資料等を基に「正確性」を追求した、技術者による精密な着色データがベース
・複数のAIによる色付け+高精細化加工データを効果的に融合することにより、深みのあるリアルなカラー化を実現
AIによる自動色付けデータを加える主な理由としては、作業効率の向上(それによる作業料金の抑制)と、より深みのある味付けをするためです。また現在では、複数のAIの出力結果を部分的に融合(いいとこ取り)して活用する場合が多く、より自然な雰囲気の味付けができるようになりました。
当社「精密カラー化」技術は、ヒトとAIのコラボレーションにより、99%の「正確さ」と「自然さ」を追求し、よりリアルな色を再現します。
「精密カラー化」は、「自然さ」と「正確さ」を追求して着色作業を行うもので、100%正確な色の再現をお約束するものではありませんが、後日、新たに判明した情報・資料等により着色した色味に疑念が生じた場合は、無償にて当該箇所の修正作業を承っております。
当社の色再現技術は、現在TV・新聞・雑誌等の各種メディアや資料館・記念館・学術機関・有名企業等からも広く認められ、多くの実績を残しております。
技術協力実績(順不同・敬称略)
・JICA(国際協力機構)海外移住資料館
・日本郵船歴史博物館
・文京区立森鴎外記念館
・田端文士村記念館
・NHK「NHKスペシャル 新・幕末史」
・テレビ東京「新美の巨人たち」
・テレビ朝日「ポツンと一軒家」
・TBSテレビ「クイズ!THE違和感」
・日本テレビ「1億3000万人のSHOWチャンネル」
・北國新聞「連載 カラーでよみがえる、ふるさと」
・北國新聞社出版局「北國文華」
・富山新聞「連載 漫画家藤子不二雄A氏の記者時代」
・教育出版
令和6年度版「小学社会6」
・文藝春秋「週刊文春」
・講談社「週刊現代」
・小学館「週刊ポスト」
・小学館「女性セブン」
・平凡社「問題の女 本荘幽蘭伝」平山亜佐子著
・マツダ「100周年記念サイト」
・聖マリアンナ医科大学
・東洋大学(井上円了哲学センター)
・大林組
・住友不動産
他多数
「精密カラー化」は、当社の「写真修復・修整基本作業」と「色再現(カラー化)作業」の組み合わせとなります。料金に関しましては「作業料金・納期」のページで難易度別でご提示しておりますが、作業内容は写真一点一点全て異なりますので、詳細はフォーム・お電話・メールにてお気軽にお問い合わせください。もちろんご相談・お見積もりは無料です。
画像の添付が可能です。